先日、私は生まれて初めて、金庫の専門業者の方に家に来ていただくという経験をしました。事の発端は、物置の奥から出てきた古い手提げ金庫です。亡くなった祖母のもので、鍵もなく、ダイヤルの番号も誰も知りませんでした。最初は好奇心から、自分で開けられないものかと挑戦してみることにしたのです。インターネットで「金庫 開け方」と検索すると、様々な情報が出てきました。ダイヤルをゆっくり回して音を聞く方法や、衝撃を与えてみる方法など、まるでスパイ映画のよう。私も見よう見まねで、耳を澄ませてダイヤルを回してみましたが、カチカチという音の区別など全くつきません。結局、一時間ほど格闘したものの、金庫はうんともすんとも言わず、私の耳が痛くなっただけでした。次に試したのは、少し強引な方法です。マイナスドライバーを隙間に差し込んでこじ開けようとしましたが、頑丈な金庫はびくともせず、ドライバーの先が曲がってしまいました。この時点で、素人が自力で開けるのは無理だと悟りました。何より、このままでは金庫を壊してしまい、仮に開いたとしても、二度と使えなくなってしまうでしょう。そこで私は、観念して専門の業者を探すことにしました。いくつかの業者に電話で問い合わせ、料金体系や作業内容を比較検討しました。最終的に選んだのは、電話対応が丁寧で、出張見積もりが無料だという地元の鍵屋さんでした。来てもらった作業員の方は、まず金庫の状態を丁寧に確認し、傷をつけずに開ける方法と、どうしても無理な場合にのみ行う破壊開錠の方法、それぞれの料金を明確に提示してくれました。その誠実な対応に安心し、作業をお願いすることにしました。作業員の方は、特殊な細い工具を鍵穴に差し込み、集中した様子で作業を始めました。それからわずか十分ほどでしょうか。「開きましたよ」という声と共に、カチャリと軽い音がしました。あっけなく開いた金庫を見て、私が費やした一時間は何だったのかと、少し呆然としてしまいました。費用はかかりましたが、金庫も中身も無傷で、何よりプロの技術を目の当たりにできた貴重な経験でした。もしまた同じような状況になったら、私はもう迷わず、最初から専門家を呼ぶでしょう。