私たちは日々、様々な鍵のトラブルに対応していますが、意外に多いのが郵便ポストに関するご依頼です。ポストが開かないという相談は、住宅の玄関や車の鍵に次いで、日常的に寄せられる悩みの一つですね。お客様は「鍵をなくした」「ダイヤル番号を忘れた」という理由でご連絡をくださることがほとんどですが、現場に伺ってみると、実はもっと別のところに原因が隠れているケースも少なくありません。例えば、鍵穴タイプのポストでよくあるのが、鍵自体の摩耗です。長年同じ鍵を使っていると、鍵の山が少しずつ削れてしまい、シリンダー内部のピンと上手く噛み合わなくなってしまうのです。この場合、鍵はちゃんとあるのに開かない、という状況になります。また、見落としがちなのが、ポスト内部からの圧迫です。特に、カタログや分厚い郵便物が大量に投函された後、それらが内側から扉を強く押していることがあります。この圧力によってラッチ(かんぬき)が正常に動かなくなり、鍵を回しても開かないという現象が起こるのです。この場合は、投函口から薄い定規のようなものを差し込んで、郵便物を少し奥に押しやりながら鍵を操作すると、すんなり開くこともあります。ダイヤル錠の場合は、操作方法の勘違いがやはり多いですが、経年劣化による内部部品の故障も原因として考えられます。特に屋外に設置されているポストは、雨風にさらされることで内部が錆びついたり、埃が詰まったりして、ダイヤルの動きが固くなってしまうのです。我々が現場で使うのは、ピッキングツールと呼ばれる特殊な工具や、時にはファイバースコープを使って内部の状態を確認することもあります。できる限りポストを破壊せず、傷つけずに開けるのがプロの仕事です。もしご自身でポストが開けられなくなった時は、無理にこじ開けようとしないでください。特に、鍵穴に市販の潤滑油を差すのは避けた方が賢明です。油が内部で埃と固まってしまい、かえって症状を悪化させることがあります。まずは管理会社に連絡するか、我々のような専門家にご相談いただくのが、結局は一番安全で確実な解決策だと言えるでしょう。
鍵屋が明かすポストトラブルの意外な原因