今回は、とある中堅企業で総務部のファシリティ管理を長年担当するベテラン社員、佐藤さん(仮名)に、日々舞い込んでくるオフィスのロッカートラブルの裏側について、匿名を条件にお話を伺いました。「いやあ、ロッカーのトラブルは本当に尽きないですね。特に週明けの月曜の朝と、週末の金曜の夕方は、まるで駆け込み寺のように社員がやってきます」と佐藤さんは苦笑しながら語り始めます。「一番多いのは、やはり単純な勘違いです。若い社員が『自分のロッカーが開かないんです!』と血相を変えて飛び込んでくるので、マスターキーを持って現場に行ってみると、一つ隣の同僚のロッカーを必死で開けようとしている。新入社員の時期には、もはや風物詩ですね。笑い話のようですが、月に数回は必ずあります」。そんな微笑ましいエピソードがある一方で、管理者として頭を抱えるようなケースも少なくないと言います。「最も困るのは、私たちに報告する前に、自分で何とかしようとして状況を悪化させてしまう社員です。以前、力任せに扉をこじ開けようとして、扉だけでなく隣のロッカーまで歪ませてしまった人がいました。当然、修理費は本人に請求しましたが、備品管理の観点からも、セキュリティの観点からも、絶対にあってはならない行為です。また、内緒で外部の鍵屋さんをオフィスに呼んでしまう人も稀にいます。これは明確なルール違反。会社のセキュリティエリアに、身元不明の外部の人間を入れることになるわけですから、発覚した際は厳重注意の対象となります」。佐藤さんたち総務部では、全社員のロッカーのマスターキーを台帳と共に厳重に管理しており、トラブル発生時にはまずそこに連絡するのが会社のルールです。しかし、そのルールがなかなか浸透しないのが悩みの種だとか。「ロッカーは会社が社員に貸与している『業務用の備品』だという意識が希薄なのかもしれません。自分の机の引き出しと同じ感覚で、プライベートな空間だと思い込んでいる。その意識のズレが、様々なトラブルの根底にあるように感じますね」。最後に、佐藤さんはこう締めくくりました。「もしロッカーが開かなくなったら、お願いですから、何もせずに、まず私たちに電話をください。それが、一番早くて、一番安全で、一番安上がりな解決方法なんです。私たちも、それが仕事ですから」。
総務部が語るロッカートラブルの実態